北海道に到達する流氷はどこからくるのか?
北海道といえば、その代名詞のひとつが流氷です。しかし、実際に流氷がどのようにして北海道に届くのかあまり知られていません。
実は、流氷の始まりはオホーツク海にあります。オホーツク海の北西部にあるシベリア沿岸の流氷が季節風や海流に乗り、南下して北海道のオホーツク海岸に漂着するのです。
オホーツク海を地図で確認すると予想外に近く感じますが、実際には1000km以上の距離があります。
アムール川からの流氷説の誤解
かつては、流氷はアムール川から来ると思われていましたが、この考えは実験により否定されました。アムール川の河口に設置されたブイがほとんど動かなかったことから、アムール川の氷は移動しないと判明しました。
一方、サハリン北部に設置されたブイは動いたものの、それがアムール川の氷ではないことが分かりました。ロシア側のサハリン西岸で発生した氷は、南下しても日本側には流れてこないことが衛星画像で明らかになっています。
こうして、アムール川が流氷の源であるという説は覆され、オホーツク海が主な発生源であることが明らかになりました。
北海道に流氷が到達する経路
北海道の冬の海景色を彩る流氷は、オホーツク海から来ます。シベリアの冷たい北西風が冬の間に海水を冷却し、そこでシベリア沿岸とサハリン東側で氷が形成されます。
その後、東樺太海流に乗って南下し、最終的に北海道へと到達するのです。
この流れは、稚内近くから宗谷暖流に乗り、紋別や網走、更には知床半島沿岸にまで達します。サハリンの東側から宗谷暖流へ向かう流れが、流氷が北海道に到着する主要な経路です。
これにより、シベリアとサハリン沿岸が流氷の主な発生源であることが確認されています。
ロシア側のサハリン東海岸沿いを南下し、その後北海道沿岸を東へと進む海流の動きが、流氷の出現パターンを形作っています。
この海流の動きを明らかにした研究は、流氷の発生と移動のメカニズムを深く理解するのに貢献しました。
北海道における流氷の見頃な時期
北海道で流氷を見る最良の時期は主に2月中旬からの約1ヶ月間です。
この期間は寒さが徐々に和らぎ始める時期であり、流氷の美しさを堪能するのに適しています。最初に肉眼で流氷が確認できるのは通常1月下旬で、その後接岸が進みます。
流氷のピークは2月上旬から中旬とされていますが、気候変動や天候によって流氷の状態や見頃が変わる可能性があります。
従って、北海道は、事前に流氷の初観測情報やその接岸状況をチェックすることが重要です。北海道では、紋別から知床にかけての広範囲にわたり、流氷を観察できるスポットがあります。
漁業にも影響を与える流氷ですが、同時に豊富な植物プランクトンを運び込むため、漁獲量の増加につながることもあります。地元の漁師たちはこの点を理解しており、流氷の恩恵を受け入れています。
流氷の見え方や雰囲気は観測地点によって異なるため、複数の場所を訪れてみるのもおすすめです。1月下旬の初観測や2月の接岸時期は、流氷の見頃を左右する重要な時期となるため、最適なタイミングを見極めるためには定期的な情報のチェックが欠かせません。
流氷の生成プロセス
流氷が形成されるプロセスは複雑で、主に海水が寒冷な風によって徐々に冷えることが基本的な原理です。海水の表面層は冷えやすく、氷が形成されることが多いです。
しかし、深い部分は冷えにくく凍るのが難しいため、海面に氷ができても完全には凍らず流氷として存在することになります。
オホーツク海の流氷の形成には、海面付近の塩分濃度が比較的低いという特徴が関係しています。これにより、水深50メートル以下で塩分濃度が高くなり、層状の海水が形成され、流氷の生成に寄与しています。
シベリアからの冷たい北西風の影響で海面が冷却され、極端な場合には気温がマイナス40度以下にもなります。これにより海岸側から海面が凍り、流氷が発生します。形成された海氷は次々と押し出され、海面を覆うようになります。
ポリニヤと呼ばれる海氷と未凍結海水の間の開いた部分では、大気と海水との間で熱交換が活発に行われ、海氷の生成を促進します。この熱交換によって短期間で広範囲に海氷が形成されるのです。
北海道の近くでわずかに海氷が生成されることもありますが、シベリアから流れ着く流氷はその厚みが特徴です。
これはサハリンの東側を南下する過程で氷の塊が大きく、厚みを増していくためです。流氷の厚みに関しては、南下する時間や過程に依存していることが分かります。
厚みが少ない流氷は、発生してから時間が経っていないか、北海道近くで生成された可能性が高いとされています。流氷の生成過程や特徴を知ることで、流氷の観察がより深い体験になるかもしれません。
北海道で流氷を観察できる主な地点
北海道で流氷を観察することができるのは、主にオホーツク海に面した沿岸地域です。中でも、紋別、網走、知床は流氷観察に最適な場所として知られています。
特に紋別に位置するオホーツクタワーは、海上から流氷を望むことができる絶好のロケーションにあり、3階建ての施設内には海底観察窓が設けられています。ここからは、海底8メートルの深さから流氷を間近に見ることができます。
海に直接出て流氷を体験できる観光船としては、氷を砕きながら進むガリンコ号があり、網走ではおーろらという観光砕氷船も運航されています。これらの船は、海上でのユニークな流氷体験を提供します。
また、網走と知床の間では、「流氷物語号」という列車での陸上からの観光も楽しめます。この列車は1日に2往復運行され、約1時間の旅を提供しています。
知床のプユニ岬は、オホーツク海を一望できる絶景ポイントです。初観測後すぐに流氷を観察できるため、早期に流氷を見たい人に特におすすめのスポットです。
まとめ
流氷が北海道に到達する源はオホーツク海にあります。これはアムール川からではなく、シベリア沿岸とサハリンで発生することが判明しています。
流氷の発生時期は主に2月中旬から約1ヶ月間で、この時期が流氷が最も盛んになる時期です。シベリアからの冷たい北西風によって冷却された海水が凍り、海氷はポリニヤと呼ばれる開いた部分を通じて新たに形成されます。
この海氷は、東樺太海流と宗谷暖流に乗り、網走から知床にかけての沿岸部に漂着します。オホーツク海沿岸のこれらの地域では、流氷を多様な方法で観察する機会が豊富にあります。
それぞれの地域には独自の魅力があり、海上クルーズや陸上列車旅行など、流氷を楽しむための様々なアクティビティが提供されています。